CLIMATE CHANGE気候変動への対応(TCFDへの取り組み)

気候関連に対する基本姿勢

当社は、気候変動は事業活動に影響を与える重要な経営課題の一つと認識し、その緩和に取り組むとともに、気候変動が当社グループの事業環境に及ぼすリスクや機会を踏まえた事業活動を行っています。
気候変動が当社に与える影響をステークホルダーの皆さまに正しく伝えることの重要性を鑑み、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同し、署名を行いました。その提言に則り、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やWWF(世界自然保護基金)などの情報を基に、世界の平均気温を産業革命以前と比べ、このまま対策を講じず4℃上昇する「4℃シナリオ」と、2℃に抑制するための施策としての「2℃シナリオ」について、リスク・機会の側面から分析を開始しました。持続可能な社会の実現を標榜した中期経営計画「Challenge 2024」のなかで、指標をより具体化するなど、今後も引き続き、分析の精度向上による更新や検討範囲の拡張を進めるとともに、分析結果を経営・事業戦略へ具体的に反映させることに努め、経営のレジリエンス(強靭性)の向上につなげてまいります。

G20の財務大臣や中央銀行総裁の要請により、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース」

TCFD提言による開示推奨項目

当社では、TCFD提言において推奨される、以下の4つのテーマに関して、気候変動関連情報を開示してまいります。

ガバナンス 気候変動リスクおよび機会に関する組織のガバナンス
戦略 組織の事業・戦略・財務計画に対する気候関連リスクおよび機会に関する実際の影響および潜在的脅威
リスクと管理 気候変動関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス
指標と目標 気候変動関連リスクおよび機会を評価・管理するのに使用する指標と目標

ガバナンス

気候変動をはじめとする社会課題の解決に向けた企業への要請が急速に高まりを見せ、ESGを経営に反映させることの重要性が増しています。当社グループにおきましても、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の実現に向け、成長を図りつつ社会価値の創造を追求することが不可欠と考え、以下のとおりの推進体制により、推進施策を講じています。(サステナビリティ推進体制図についてはこちらをご覧ください。)

推進体制

当社は代表取締役社長を委員長、取締役・執行役員の全員と社外監査役を委員とする、取締役会の監督の下でのサステナビリティ委員会を設置し、活動を推進しています。
本委員会において、気候変動対策をはじめ、サステナビリティに関する方針・戦略・計画・施策の検討・立案、グループ各社の課題の抽出と強化・改善に向けた方策の明確化等の審議を行っています。審議された内容は適宜グループ経営戦略会議・経営会議・取締役会に報告されます。取締役会においてサステナビリティ課題への積極的・能動的な議論を推進します。
委員会においては、環境関連や気候変動関連の議題を掲げ、CO2排出量の削減目標の設定、サプライチェーン排出量の削減に向けたScope1・2・3にわたる当社グループの排出量の算定、持続可能な調達実現を目指す調達方針など、カーボンニュートラルや環境マネジメントに関する方針を策定しました。

戦略

TCFD提言に則り、「4℃シナリオ」と「2℃シナリオ」について、リスク・機会の側面から分析を開始しました。各シナリオにおける当社グループへの影響と主要インパクトについては右記の通りです。
気候変動は、当社の事業へのリスクである一方で、製品・サービスの提供価値および企業価値を高める機会につながると認識しています。当社のサステナビリティ基本方針に則り、気候変動に対応する、またその進行を抑制する脱炭素化に向けた製品・サービスの提供、新規事業の創出などを促進しています。
気候変動によるリスクと機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす実際の影響と潜在的な影響について、分析・評価の精度の向上を図り、優先度の高い主要インパクトの特定と対応策の検討を実施します。それらの結果は、取締役会が監督し、適切に経営戦略へ具体的に反映させることに努め、経営のレジリエンスの向上につなげるとともに、可能となった時点で開示します。

各シナリオにおける当社グループへの影響と主要インパクト

※表の部分は横にスクロールできます。

4℃シナリオにおける主要インパクト
気候変動に関わる変化 主要インパクト 当社グループへの主な影響 具体的な影響イメージ
4℃ リスク 物理リスク※1 慢性リスク※2 降水・気象パターンの変化 気温上昇、水不足 生産効率の低下、対策費用の上昇、働き方の再検討
水力発電所の稼働低下
急性リスク※3 ライフスタイルの変化 感染症リスクの増加 従業員の健康配慮
機会 市場・製品とサービス 気温上昇によるライフスタイルの変化 気候変動の進行に適応する製品・サービスの需要増加 ガラス破砕具付発炎筒への全量切替
飲料の需要増加

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2℃シナリオにおける主要インパクト
気候変動に関わる変化 主要インパクト 当社グループへの主な影響 具体的な影響イメージ
2℃ リスク 移行リスク※4 法・規制に関するリスク カーボンプライシングの導入 炭素税の発生 コストの増加
テクノロジーリスク CO2排出規制の強化 省エネ対策が強化され、製造設備の高効率化への更新が必要 設備投資額の増加
市場リスク 再生可能エネルギー拡大 エネルギーコストの増加 製造コストの増加
レピュテーションリスク 投資家評価の変化 気候変動への対策が不十分な場合、投資家の評判悪化、資金調達が困難となる 投資の縮小
顧客要求の変化 気候変動への対策が不十分な場合、サプライチェーンから除外される 該当する製品の売上減少
機会 市場・製品とサービス 環境意識向上によるライフスタイルの変化 気候変動の緩和に貢献する、環境に配慮した製品・サービスの需要増加 回生エネルギー用途の電解液の需要増加
電気自動車の普及
水素循環社会の実現
蓄電池需要の増加

※表の部分は横にスクロールできます。

気候変動に関わる変化 主要インパクト 当社グループへの主な影響 具体的な影響イメージ
2℃・4℃
共通
機会 資源効率 省エネルギーの促進、廃棄物処理の削減 コストの削減 燃料費・電気代削減
エネルギー 創エネルギーの促進 クリーンエネルギーの調達促進 水力発電所の稼働継続、太陽光発電への切替促進
レジリエンス 計画的な気候変動対策の経営反映 リスクの最小化 火災保険に水害付保、防水設備強化
  1. 物理リスク=気候変動によってもたらされる災害などの被害
  2. 慢性リスク=降水パターンの長期的な変化や気象パターンの変動、平均気温や海面の上昇によって受ける影響
  3. 急性リスク=台風や洪水、高潮などの異常気象の激甚化によって受ける影響
  4. 移行リスク=気候変動緩和を目的とした脱炭素社会への移行に向けて発生するリスク

リスク管理

自然災害・感染症の発生等により、経済環境に大きな影響を及ぼす可能性があり、また生産設備や人的資源への損害の発生、顧客の需要動向に大きな変化が起こる可能性があります。これらが当社の業績および財務状況に大きな影響を及ぼす重要なリスク要因の一つであると認識しています。
リスク管理をより一層強化し、適切な策を講じるために、経済環境への大きな影響については経営企画部が、人的被害の大きな影響については人事部と総務部が対応し、これらをステークホルダーに適宜・適切に開示する役割を広報・サスティナビリティ推進室が担っています。さらに、生産活動や品質へのリスク管理の強化を図るために2021年度より生産・品質統括部を設置しました。
また、代表取締役社長を委員長とするグループリスクマネジメント委員会を設置し、気候変動を含む総合的なリスク管理体制を構築しました。
グループ各社から集約されたリスク情報がタイムリーに経営陣に報告され、グループ全体におけるリスクの漏れのない検出、対策への優先順位付け、経営判断を滞りなく実行するよう、今後も一層注力します。

指標と目標

気候変動による地球温暖化の影響で、集中豪雨、熱波・干ばつなどの異常気象が発生し、洪水や渇水など自然環境に大きな被害をもたらしています。当社グループは、特に水資源等豊かな自然の恵みのうえに成り立っていることから、気候変動は解決すべき重要な社会課題の一つと認識しています。
2050年までにカーボンニュートラルの実現に向け、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの活用などを促進し、温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組んでまいります。また、エネルギー使用量・CO2排出量データの開示範囲の向上に努めてまいります。

サプライチェーン排出量

当社グループは、気候変動に関するリスクと機会を測定・管理するための指標として、サプライチェーンCO2排出量(Scope1・2・3)を算定しました。排出量実績の定期的な管理体制を構築することで、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでまいります。
算定にあたっては、GHG排出量算定・可視化クラウドサービス「zeroboard」を採用しています。

「zeroboard」は国際的な認証機関ソコテック(SOCOTEC)の日本法人であるソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社のISO14064-3に基づく監査のもと、GHG 排出量算定の国際基準である GHG プロトコル「Corporate Accounting and Reporting Standard」および「Corporate Value Chain(Scope3) Accounting and Reporting Standard」、「GHG Protocol Scope2 Guidance」、「ISO14064-1」、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.3)」(環境省)に基づいて適切に設計されていることの妥当性確認を受けています。

2022年度のサプライチェーンCO2排出量実績(t-CO2

カーリットホールディングス㈱・日本カーリット㈱・ ジェーシーボトリング㈱・㈱シリコンテクノロジー・ 並田機工㈱・東洋発條工業㈱・富士商事㈱の実績合計

  1. 自社における燃料使用に伴う直接排出
  2. 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  3. 上流(原材料、輸送配送、通勤等)・下流(製品の使用・廃棄等)の活動に伴う間接排出

当社サプライチェーンCO2排出量は、株式会社ゼロボードのGHG排出量算定・可視化クラウドサービス「zeroboard」によって算定しています。

「zeroboard」は国際的な認証機関ソコテック(SOCOTEC)の日本法人であるソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社のISO14064-3 に基づく監査のもと、GHG 排出量算定の国際基準である GHG プロトコル「Corporate Accounting and Reporting Standard」および「Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard 」、「 GHG Protocol Scope 2 Guidance」、「ISO14064-1」、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.3)」(環境省)に基づいて適切に設計されていることの妥当性確認を受けています。

データ詳細は「ESGデータ」をご参照ください

サプライチェーン排出量削減目標

当社は持続可能な社会の実現に向け、2050年までに自社の事業活動およびサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を掲げています。
Scope1・2については、そのマイルストーンとして、2030年までに2013年度対比で46%削減することを目標としています。目標の達成に向け、省エネルギー・創エネルギーの促進、再生可能エネルギーの活用促進、関連するエネルギー使用量の情報開示範囲の拡大に取り組んでまいります。
Scope3については、当社グループの総排出量のうち約8割を占めており、脱炭素社会の実現のためにはScope3排出量削減が不可欠であると認識しています。特に購入した製品・サービスに該当するカテゴリ1はScope3の約7割を占めています。サプライチェーンを通じた脱炭素の実現に向け、サステナブル調達アンケートや排出量算定システムを通じてお取引先さまとのコミュニケーション強化に努め、削減に向けた取り組みを促進するとともに、2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年までのScope3削減目標の設定についても今後対応を進めます。

気候変動の機会

当社では、気候変動は事業へのリスクである一方で、機会につながると認識し気候変動に対応する、またその進行を抑制する脱炭素化に向けた製品・サービスの提供、新規事業の創出などを促進しています。

気候変動に対応する製品例‒ガラス破壊具付き発炎筒‒

近年、ゲリラ豪雨の発生が増加し、道路の冠水や川の氾濫による車中閉じ込め死亡事故が多発しています。2019年に発生した台風19号では、洪水に巻き込まれるなどして亡くなられた方が約3割にのぼった(共同通信調査)とされています。

自動車が一定の深さまで水没してしまうと水圧が加わり、ドアを開けることが困難になります。さらに浸水が進むと電気系統が故障し、パワーウィンドウが作動しなくなるおそれもあります。
JAF(日本自動車連盟)の実験により、狭い車内では力が入れにくいうえ、水没時は水の抵抗もあり、脱出用に特化された器具以外のものではサイドガラスが割れないという結果が出されています。また、国土交通省はサイドガラスをガラス破壊具で割って脱出することを、国民生活センターは緊急脱出用のハンマー等の備え付けを推奨しています。自動車用緊急保安炎筒(発炎筒)のトップシェアを誇る日本カーリット㈱では、先端に脱出用のガラス破壊具を付けた「スーパーハイフレヤープラスピック」を製造・販売しています。
自動車の事故や故障時の安全確保に貢献することに加え、気候変動に適応した安全への備えとして通常品からの切替を訴求しています。